最近では個人でアフィリエイトブログやオンラインサービスを展開し、かなりの収益をあげる方も増えてきています。
ある程度稼げるようになった頃、痛みを増してくるのが税金です。
今回は、そんな海外移住を視野に入れている個人事業主の方に向けて、東南アジア諸国の税制を比較します。
所得500万円のフリーランサーに税金がいくらかかるのかという視点で、あなたが住むべき東南アジアの国(と香港・台湾)を選んでみたいと思います。
尚、この記事の内容は2021年5月現在の情報に基づいています
日本の税率を他の国と比べてみる
日本は、アジアのみならず世界でもトップレベルの高税率国です。
個人にかかる所得税を例に、各国の税率を見てみましょう。
国 | 所得税(最低税率) | 所得税(最高税率) |
---|---|---|
アルバ(オランダ自治領) | 7% | 58.95% |
日本 | 15.105% (5.105% 国税 + 10% 地方税) | 55.945% (45.945% 国税 + 10% 地方税) |
デンマーク | 39.8596% | 55.8584% |
オーストリア | 0% | 55% |
アイルランド | 20% | 52% (40% 所得税 + 12% 社会保障料) |
スペイン | 19% | 52%(ナバラ州) 45%(ナバラ州以外のスペイン本土) |
スウェーデン | 32% | 52% (32% 市町村税平均 + 20% 国税) |
アメリカ合衆国 | 10%(10% 連邦税 + 0% 州税) |
51.6% (オレゴン州ポートランド 37% 連邦税 + 9.9% 州税 + 4.7% 都市税) |
フィンランド | 8.4%(0%所得税 + 8.40% 社会保障料) | 51.35% (31.25% 国税 + 18% 市町村税(ヘルシンキ)+2.1%社会保障料) |
ベルギー | 25% | 50% |
個人所得税の最高税率ランキング
(Wikipedia, ジェトロHPより筆者作成)
個人にかかる所得税は、日本を含め、多くの国で累進課税制度(所得の多い人ほど、税率が高くなる仕組み)が採用されています。
つまり「年収XX億円」といった人々は、収入の大部分に対してその国の最も高い税率が課されることになるのです。
その最も高い税率でランキングを作ると、なんと日本は第2位にランクインしてしまいます。
所得の前提や各国の税控除等によりランキングは多少前後するかもしれませんが、日本の税率はアジアどころか世界でトップレベルなのはお分かり頂けると思います。
では、今回ご紹介する東南アジア諸国と香港・台湾の税率はどうでしょうか。
国 | 所得税(最低税率) | 所得税(最高税率) |
---|---|---|
日本 | 15.105% (5.105% 国税 + 10% 地方税) | 55.945% (45.945% 国税 + 10% 地方税) |
台湾 | 5% | 40% |
ベトナム |
5% (給与所得の税率) | 35% (給与所得の税率) |
0.5% (個人事業にかかる税率) | 5% (個人事業にかかる税率) | |
フィリピン | 0% | 35% |
タイ | 0% | 35% |
インドネシア | 5% | 30% |
マレーシア | 0% | 28% |
カンボジア | 0% | 20% |
シンガポール | 0% | 22% |
香港 | 0% | 15% (非法人ビジネスにかかる利益税率) |
東南アジア諸国の個人所得税
(Wikipedia, ジェトロHPより筆者作成)
最高税率で日本はダントツの1位です。さらに最低税率で見てもやはり1位です。文句のつけようなし。
一方で東南アジア、東アジアの国々の税率は最高でも台湾の40%と、日本よりも15%以上税率が低く、シンガポールや香港は最高税率が日本より30%以上低い結果となります。
このような大きな税率の差が生じる理由は、シンガポールや香港といった資源や国土の少ない国々はかなり昔から海外の富裕層や投資家を集めるべく、税率を低く抑える戦略を採っているからです。
日本との政策の差が、税率の差になって現れているんですね。
日本の税率の高さがわかったところで、次は東南アジア諸国にあなたが移住した場合の税金をシミュレーションしてみましょう。
シンガポールや香港での税金が日本に比べてどれほど安いのか、楽しみですね。
所得500万円のフリーランサーが東南アジアに移住したら、税金はいくらになるか
いくつか計算の前提をご説明してから、計算結果をランキング形式でご紹介します。
計算の前提(フリーランサーのAさん)
- 課税所得(=収入ー経費): 500万円/1年
- ステータス:移住先に定住しており、日本の非居住者
- 職業:個人事業のネットビジネス経営(日本の国内源泉所得無し、給与所得無し)
- 税金の計算方法:
- 2021年5月現在の各国税率を使用。
- 各国の所得控除、税額控除や補助金等は無視。
- 年間を通じて為替変動が無いと仮定。
先程の最高税率のランキング順に、所得500万円にかかる税金がいくらになるか見てみましょう。
こうなります。
国 | 所得税
(最低税率) |
所得税
(最高税率) |
所得500万円
にかかる税金 (万円) |
---|---|---|---|
日本 | 15.105% (5.105% 国税 + 10% 地方税) | 55.945% (45.945% 国税 + 10% 地方税) | 108 |
台湾 | 5% | 40% | 49 |
ベトナム(※) |
0.5% (個人事業にかかる税率) | 5% (個人事業にかかる税率) | 5 |
フィリピン | 0% | 35% | 61 |
タイ | 0% | 35% | 78 |
インドネシア | 5% | 30% | 108 |
マレーシア | 0% | 28% | 85 |
カンボジア | 0% | 20% | 61 |
シンガポール | 0% | 22% | 17 |
香港 | 0% | 15% (非法人ビジネスにかかる利益税率) | 38 |
※ ベトナムでは個人事業の種類毎に0.5%~5%の税率が適用される。Aさんの個人事業は税率1%の「その他ビジネス」に該当すると仮定
所得500万円にかかる税金
(ジェトロHP、各国の歳入庁・国税庁HP、ヤフーファイナンスより筆者作成)
そうです。結果がわかりやすくなるよう、税金の額と、実効税率(=税金の額 ÷ 所得)で安い順に並べ替えましょう。
国 | 所得500万円
にかかる税金 (万円) |
所得に対する
実効税率 |
---|---|---|
ベトナム |
5 | 1.0% |
シンガポール | 17 | 3.3% |
香港 | 38 | 7.5% |
台湾 | 49 | 9.8% |
カンボジア | 61 | 12.1% |
フィリピン | 61 | 12.1% |
タイ | 78 | 15.5% |
マレーシア | 85 | 17.0% |
インドネシア | 108 | 21.5% |
日本 | 108 | 21.7% |
所得500万円にかかる税金と実効税率
いかがでしょうか。個人事業主への所得税が特に低く設定されているベトナムがナンバーワンになります。
歌手のGACKT氏が移住したことで話題になったマレーシアは、意外にも日本とあまり変わらない税負担となっていますね。
もちろんGACKT氏は高所得者のはずなので、55%の最高税率が適用される日本よりは、マレーシアでの税負担は低く抑えられているでしょう
なんとなく「東南アジアならどの国に行っても日本より税金は安い」というイメージがあったかもしれませんが、具体的な所得を前提に計算してみると、大して税金が安くならない国もあることが分かります。
今回、東南アジア各国の税金額を概算するのに使用したスプレッドシートを載せておきます。
ご自身の想定所得を入力すると各国の税金額を円建てで計算してくれます。
税額控除など国ごとの細かい設定を加えていければ更に精緻な税額が計算できます。
参考にしてみてください。
香港やシンガポールは必ずしもフリーランス向けの移住先ではない
シンガポールはオリラジの中田敦彦氏が移住したり、ジム・ロジャースといった有名投資家が拠点にしたりと、富裕層が住んでいる事で大変有名です。
香港についても日本企業の経営者が、実は住所が日本ではなく香港になっていたりと、富裕層の移住先になっていることはご存じの方も多いのではないでしょうか。
富裕層がこういった国々に好んで移住するのは、税率の低さ以外にも、安全面、医療の充実、食の豊富さ、エンターテインメントの充実など、生活水準に関する要因があります。
そういった点で香港やシンガポールはある意味「ブランド」を確立した国であり、そのブランドによってさらに富裕層や周辺に群がる労働者達を惹きつけているという側面があります。
一方、富裕層ではない一匹狼のフリーランスではどうでしょうか。
特に、ネットビジネスを手掛けていて、人を雇うことなく、インターネットとPC一つでビジネスが成り立ってしまうフリーランスにとっては、移住先としてのブランドや生活水準の高さよりも、低い税率、インターネット、そして「そこそこの安全」が重要でしょう。
また、香港やシンガポールは特に食や住居にかかるコストが非常に高く、東京に比べて生活コストが上がってしまうことは避けられません。
例えば、所得が200万円程度ならシンガポールでは税率が0%ですが、所得200万円ぽっちで物価の高いシンガポールで暮らすのは、正直かなりキツイでしょう。
さらには、この記事では検討していませんが、香港やシンガポールではビザ発給の要件が厳しく、これらの国に合法的に定住できるかも課題となります。
税金以外の切り口から見てみると、富裕層の移住先としてイメージされる香港やシンガポールは、必ずしもフリーランスにとってのユートピアではない、ということが言えます。
東南アジアへの移住、おすすめはこの国【まとめ】
これまで検討してきた通り、所得500万円の個人事業主を前提にした場合、税金の低さからおすすめの移住先は、
ベトナム
です。
ただし、実際の税金計算はご自身のビジネスの実態と最新の税制に基づいて慎重に検討する必要があります。この記事の税金計算はあくまで参考情報としてご理解ください。
しかし、移住の魅力は税金以外にもある
税金が安いことはもちろん重要ですが、その国が居住地として好きかどうか、長く快適に暮らせそうかという点も移住先を決める上では重要です。
筆者は自分の渡航経験から、ベトナムはとても良い国だと思います。
ですが、食のレベルが高い台湾やリゾート地の多いタイも、実効税率が10%〜15%程度の範囲ならば中々捨てがたいです。
移住先は税金以外の観点でも十分に検討するようにしましょう。
本日は以上です。
この記事が皆さんのお役に立てば幸いです。